アクセシビリティ対応の第一歩は現状を知ることから
当社では、ウェブサイトの診断や改善方法のご提案を通じて、すべてのユーザーにとって使いやすいウェブづくりをサポートしています。ご相談・ご依頼は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせVol.6
使える基準は、マウスじゃなくても届くこと
あるとき、社内でテスト中のWebページをキーボードだけで操作してみました。
マウスをそっと手放し、Tabキーを押してみる。
それだけのことなのに、思った以上に戸惑いました。
メニューが開かない。どこにフォーカスがあるのかわからない。リンクにたどり着けない。
普段は気にも留めていなかったような、ささいなつまずきが急に目の前に現れてきたのです。
私たちはふだん、マウスやタップ操作でWebを利用しています。
でも実際には、キーボードだけで操作している人も少なくありません。
たとえば、
こうしたユーザーにとって、マウスなしで使えることは、選択肢ではなく前提です。
そしてこの視点は、アクセシビリティにおいてとても大切な基礎になります。
私が最初に戸惑ったのは、「今どこを操作しているのかがわからない」ということでした。
たとえば、Tabキーでフォームの入力欄やボタンを移動しても、見た目に変化がなく、どこにフォーカスがあるのかがわからない。
リンクにフォーカスしても、色も下線も変わらず、操作できているという実感が得られない。
つまり、操作できる以前に、操作できていると感じられることが欠けていたのです。
この安心感の欠如が、キーボード操作の離脱につながる大きな要因のひとつだと感じました。
キーボード操作に対応するというのは、Tabキーで移動できるだけではありません。
Shift+Tabで戻ったり、Enterキーやスペースキーでボタンを押したりと、一通りの操作が直感的に行えることが求められます。
さらに、次のような配慮も重要です。
つまり、見た目どおりに使えることと、読み上げられた順に操作できることが一致している状態こそが、本当の意味で使えるWebなのです。
以前は、「これは一部のユーザーのための対応」だと思っていたこともありました。
でも今では、キーボード操作で試してみること自体が、設計の検証になると感じています。
キーボードで操作してみることで、たとえばフォーカスが意図しない順番で移動してしまったり、飛ばしたくない要素を素通りしてしまったり、リンクやボタンにたどり着けなかったりと、設計上のほころびに気づくことがあります。
だからこそ、これは「誰かのための配慮」というより、「本当に使える設計になっているかを、自分で確かめる方法」でもあるのだと思います。
まだ試したことがない方は、一度ご自身のサイトをキーボードだけで操作してみてください。
これだけのことで、設計がユーザーに届いているかどうかの手がかりが得られます。
きっと、これまで見えていなかった発見があるはずです。
伝えることと使えることは、実はとても近い関係にあると思います。
たとえば、フォームの送信ボタンにたどり着けなければ、情報は入力されずに終わってしまう。
リンクに気づけなければ、ページは読まれずに閉じられてしまう。
使えることが、伝わるための最低条件になる場面は、たくさんあります。
だからこそ私は、設計の一部としてキーボード操作を意識していきたい。
それは、困っている誰かのためであると同時に、自分たちが届けたいものを正しく届けるためでもあると思っています。
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