アクセシビリティ対応の第一歩は現状を知ることから
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お問い合わせVol.3
行間・文字サイズ・行の長さと、読みたくなる設計の話
あるとき、とあるWebページを読んでいて、何度も目が滑る感覚に襲われました。
文章の内容には興味があるのに、読むのがしんどい。
気づけば途中で読むのをやめて、ページを閉じていました。
原因はすぐにわかりました。
文字が小さく、行間が詰まっていて、1行が長すぎる。読むことに集中できない設計だったのです。
そのとき、はっきりと気づきました。
読みやすさは、伝えたい内容よりも前に形で決まってしまうことがあるということに。
私たちは読みやすさを、つい見た目の美しさやレイアウトの印象として捉えてしまいがちです。私自身もそうでした。
けれど、読みづらさに直面したときに気づいたのは、読みやすさとはどう見えるかではなく、どう流れるかの設計にあるということです。
たとえば、
これらは、読み手の能力やモチベーションの問題ではなく、制作者側の設計の問題です。
読む前に読む気を失わせるページは、情報が届く前に遮断されているのです。
以前、自分が制作に関わったWebページで、読みにくいといったフィードバックをもらったことがありました。
そのとき私は、「内容はちゃんと書いたのに」と、正直悔しくて、素直に受け止められませんでした。
でもあとから、少し距離を置いてそのページを見返してみると、文字の密度は高く、1行は60文字を超え、段落の切れ目もあいまい。
読む人のことなんて、きちんと考えられていなかったな、と思いました。
読む気を削ぐ構造を、自分がつくっていたんです。
しかもそれに、作ったときにはまったく気づいていなかった。
伝えたつもりでいたけれど、そもそも読まれていなかったのだとしたら、それは伝えたことにならない。
そう思ったとき、「あのまま放っておかなくてよかった」と、少しだけ救われたような気がしました。
こうした読みにくさは、単に快適性を損ねるだけではありません。
特に支援技術を使うユーザーにとっては、情報の断絶に直結する大きなバリアになります。
たとえば、視覚に障害のあるユーザーがスクリーンリーダーで文章を読み上げる場合、1行に情報が詰まりすぎていると、話の流れがつかみにくくなります。
文や段落の区切りがわかりづらいと、どこで意味が切り替わっているのかが判断しにくく、内容が頭に入ってこないこともあります。
一文が長すぎたり、全体の構造が整理されていないと、意味のまとまりを把握するのが難しくなってしまうのです。
また、人によっては、文字がぎゅっと詰まっていたり、文章のリズムがバラバラだったりすると、それだけで読むこと自体がとても大変に感じられることもあります。そうしたちょっとした読みづらさが、読み進める力を奪ってしまうこともあります。
だからこそ、読みやすく整えるということは、誰かの読みやすさを支えるだけでなく、誰かの読むことそのものを成立させる配慮でもあるのです。
では、どんな点に気をつければよいのでしょうか?
あくまで基本ではありますが、次の3点は意識すべき重要なポイントです。
これらは、読み手のリズムに寄り添う設計の基礎です。
私は以前、読みやすさは技術やノウハウだと思っていました。
でも最近、それはむしろ思いやりの話なのかもしれないと感じるようになりました。
それらはすべて、読む人の時間と集中力を尊重する姿勢だと、今は思っています。
そしてそれこそが、アクセシビリティの根底にあるものだとも思うのです。
読まれる文章は、ただ伝えるのではなく、読みたくなる構造であることが必要です。
読めば分かるではなく、読みたいと思える状態で届けること。
そのために、文字の大きさ・行間・行の長さといった一見地味な要素にこそ、伝わる設計の本質が宿ります。
読む気はあるのに、読めない。
その状態をなくすために、当たり前の部分を、もう一度見直していきたいと思います。
あとがきを書くのも、これで3回目になりました。
どのテーマも書いてみると、思っていた以上に自分の中の曖昧さに気づかされます。読みやすさもそのひとつでした。
自分ではちゃんと書けたつもりでも、読む人にとっては伝わりにくかったかもしれない。それって、Webの文章だけじゃなく、仕事でも日常でも、きっと起きていることだと思うんです。
読んでもらえるように整えるということは、相手のペースを想像すること。
それが、アクセシビリティの原点かもしれないと、今は思っています。
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