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Vol.2

色の違いが伝わらないって本当?

それでも伝わるようにするために、できること

先日、あるWebサイトの入力フォームで、送信ボタンがグレーになっているのを見て、「これ、押せないってこと? それとも、単にこういうデザイン?」と一瞬戸惑いました。

実際は、入力項目が足りていなかっただけだったのですが、使える状態と使えない状態が色だけで表現されていたことに、ちょっとモヤッとしたのを覚えています。

たまたまだと思ってスルーしそうになったけれど、ふと「これ、もしかして自分だけじゃないのかも」と感じました。

それから少しずつ、色の見え方について調べるようになりました。思っていた以上に、色だけではうまく伝わらない世界で日常を過ごしている人が多いことに気づいたんです。

見えているようで伝わっていないことがある

私たちは普段、赤・青・緑などの色で情報を区別しています。

たとえば、

  • 重要な情報は赤文字で表示
  • キャンセルボタンはグレー
  • リンクとそうでない文字を、青と黒で色分けする

このように、色で何かを伝えようとする場面は少なくありません。

でも、色覚のタイプによっては、赤と黒の違いがわかりにくかったり、緑と茶色が区別しづらかったりすることがあります。青と紫が混ざって見えるというケースもあるそうです。

この色で伝えようと思って使ったものが、誰かにはまったく伝わっていなかったかもしれない。そう気づいたとき、自分が思っていた以上に色に頼っていたことを知り、少し驚きました。

読みにくさは誰にでも起こりうる

コントラスト比という言葉をご存じでしょうか?
これは、文字と背景の明るさの差を数値で表したもので、ちゃんと読めるかどうかを確認するための指標です。

たとえば、白い背景に薄いグレーの文字は、視力や色覚に関係なく読みにくいと感じる人が多くなります。

実際、Webアクセシビリティの国際基準(WCAG 2.1)では、以下のようなコントラスト比が推奨されています。

  • 通常の文字※1:コントラスト比 4.5:1 以上
  • 大きな文字※2:3.0:1 以上
※1
通常の文字:太字でないテキストが18ポイント(日本語は22ポイント)未満、太字のテキストが14ポイント(日本語は18ポイント)未満の場合
※2
大きな文字:太字でないテキストが少なくとも18ポイント(日本語は22ポイント)以上、太字のテキストが14ポイント(日本語は18ポイント)以上の場合

私自身も最初は「ちゃんと見えてるから大丈夫」と思っていましたが、自分が読めることと、他の人が読めることは別なのだと、あらためて感じました。

工夫は意外とシンプル

色が伝わらないかもしれないと思うと、少し難しく考えてしまいがちですが、実は、ほんの小さな工夫で改善できることも多いです。

たとえば、

  • ボタンに「削除」や「送信」などの文字を添える
  • グラフの線を、色だけでなく点線や実線で区別する
  • 色と同時に、アイコンやラベルで意味を伝える
  • コントラストチェックツールで、背景と文字の組み合わせを確認する

どれも、ちょっと意識するだけで伝わりやすさが大きく変わる方法です。

見えていたつもりに向き合ってみる

コントラストチェックツールを初めて使ったとき、私は驚きました。
「え、これダメなの?」と思う組み合わせが、不合格と表示されたからです。

でもそれは、自分の感覚では届いていても、誰かには届かないかもしれない。
そんな、シンプルだけど大切なことを教えてくれる体験でした。

私は、見た目がきれいで終わるのではなく、ちゃんと伝わることを目指したい。
その気持ちを、忘れないようにしたいと思っています。

伝わるは想像することから始まる

「この色が好きだから」「この配色がデザインとして美しいから」
そう思って選ぶ色が、誰かには見えていないかもしれない。

それでも、伝えたいなら伝わるように工夫すればいい。
伝わらなかったかもしれない誰かに思いを巡らせて、もうひと工夫してみる。

アクセシビリティって、そういうやさしさの積み重ねなんだと思います。

あとがきに代えて

今回、たくさんの人の声を聞きながらコラムを書き直しました。書きながら何度も立ち止まって、「私はなぜこれを書いているのか」と問い直す時間になりました。

私が伝えたいのは、技術よりも気づきです。
誰かの見え方は、自分とは違うかもしれない。
それに気づくだけで、デザインは少しやさしくなると思っています。

これからも、そういう小さな視点を大切にして、書き続けていきたいと思います。

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